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映画感想「レッド・クリフ」 [テレビ・映画]

見てきました「レッド・クリフ」。連休中とはいえ、夕方5時45分からの回がほぼ満員。8月の「スカイ・クロラ」はがらがらだったのにえらい違いです。あっちも宣伝は結構していたのに。しかもあの時は封切り当日。今日は封切り二日目です。本当に映画は水物、何が当たるか外れるか分かりませんねえ。
それでこの映画、三国志ファンがたくさん見に来ているのかと思ったら、帰りの客の会話を聞いているとそうでもないみたい。ますます何でこんなたくさんの人が見に来ていたのか分かりません。だってこの映画、三国志を知らなかったら、半分ほどの価値しかないですよ。映画の最初に簡単な説明をしてくれますが、何よりキャラにある程度思い入れがないと十分には楽しめないでしょう。逆に三国志が好きな人には、見て損はないと思います。大作ですから、是非映画館でやっているうちに見ることをお薦めします。ただし、私がお薦めだと言うのは、「正史」や「演義」を読んでおけとは言いませんが、せめて吉川英治とか、横山光輝とかの作品や、NHKの人形劇を見ていることが前提です。最近三国志をネタにしたゲームとかアニメとかありますが、それで分かったつもりで見に行ってはダメでしょう。

さて前置きが長くなりました。今回封切りの映画は「赤壁の戦い第1部」です。当然赤壁で曹操軍の水軍が炎上するシーンまでは行きません。そこのところは了解しておいて下さい。で、この第1部の映画の扱う範囲はどこまでかというと、新野の戦いで劉備軍が負けるところ(これが前半の戦闘シーン)から、曹操軍が赤壁の対岸に陣を布くところまでです。
「うん?赤壁の対岸て何?」と思った方、いいところに気がつきましたよ。何とこの映画では、「赤壁」とは揚子江の呉側の川岸にあります。つまり曹操がやられるところは赤壁ではなく、「その対岸なのだ」という設定です。なぜそんなことになっているかというと、孔明が呉に曹操と闘うことを説きに来た時、周瑜が軍を訓練していたところがここで、ここに館を構えて奥さんの小喬と暮らしているのです。つまり赤壁を呉側にして、呉軍の、そして後に同盟して合流する劉備軍の映画における「舞台」にしているわけです。これは赤壁の正確な位置は実は今に至るも分かっていないということを逆手に取ったうまいやり方といえましょう。
で、この赤壁を呉側にするということで、後半のクライマックス、赤壁の戦いの前哨戦が出てきます。これは「正史」はもちろん「演義」にもないこの映画のオリジナルと言えるものですが、架空の戦闘とはいえ、これは一見の価値があります。なにしろあの「八卦の陣」の映像が見られるのです。あるいは「八門頓甲の陣」のことなのかもしれません。映像を見ると、このネーミングの方があっていると思うので。
で、ここから先はネタバレになるので改行します。何しろ架空の戦いなので、ここだけは三国志を知っている人でも「あなたの知らない」世界になるので。

















この「八卦の陣」は一言で言うと、「平野に市街地のような地形を作り、敵軍を分断し、各個に撃破する」というのものです。この映画を見てこれが分かった人は、かなりのウォーゲーム通と言えるでしょう。
曹操は赤壁の敵根拠地に狙いを定めますが、荊州を取ったことで得た水軍はおとりとし、密かに騎兵部隊を進めて裏から赤壁を攻略しようとします。しかしそれを見破った孔明と周瑜は、この騎兵部隊を迎え撃つ陣を布きます。それが「八卦の陣」なのです。これは盾を持った歩兵が大きな円の中がいくつもの「部屋」に仕切られたような陣形を布き、その中の「通路」に敵を誘い込み、敵が入ったら「入り口」を閉じ、あとは分断した敵を各個撃破するというものです。平野で騎兵を迎え撃つということが普通はいかに難しいかを知らないと、なんでわざわざこんな凝った陣形を布くのか理解できないでしょう。これは敵を作られた市街地に誘い込み、迷っている敵を分断して各個に撃破するというものなので、もしそんな村や町が適当なところにあればそこでそうするでしょう。しかしその場合は敵も市街地の位置を知っているので警戒します。この映画では敵が「八卦の陣」に当たる前に騎馬が地面に木の枝を引きずって砂ぼこりを起こして陣を隠し、走ってきた敵騎兵はほこりが晴れたところで急に目の前に陣が現れ、矢をいかけられて盾の壁の切れ目に走り込むようにしています。
そして敵を誘い込んだ後、敵を各個に撃破するのに出てくるのが、関羽、張飛、趙雲たちで「こいつら人間じゃねえ」という強さで敵を倒していきます。その登場の仕方がかっこいいんです。盾を持った歩兵の列が横に動いて、まるでシャッターが開いたように英雄達が飛び出して来るという演出で、これは本当にうまいなと思いました。これをするための「八卦の陣」なわけです。
ただし、実際にはこういう陣形はうまくいかないでしょうね。そもそも陣形を作り、維持するだけで大量の歩兵が必要になるわけで、しかも彼らは完全に統制が取れていて、いくら攻撃されてもその陣形を維持する忍耐力と、合図とともにすばやく陣形を変化させる機動力をもっていることが必要です。それだけのことができる歩兵が大量にいるなら、普通に戦闘しても勝てるんじゃないかと思いますね。実際の戦争でも使われたことはたぶんないでしょう。
しかし、それが映画ならできるということで、このシーンは絶対に一見の価値ありと思います。いったいこのシーンだけでどれだけ人と金を使ったことか。いくら人件費が安い中国とはいえ、これは1800円払って見なければ申し訳ないと思いましたね。

あと、映画のエンドロールの後に第2部の予告があります。これは今はこの第1部を見ないと見られないわけですから、見逃すと損ですよ。ただ、見ても第二部の筋とかは全く分かりませんが。

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