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CMJ#97「コルスンの戦い」-感想その2 [コルスンの戦い]

感想の続きです。
このゲームのいいところで言っていないことがありました。
それは戦闘システムについてです。

1 逐次・移動戦闘について
 このゲームの逐次移動戦闘システムは、PGGのオーバーランや旧SPIのセントラル・フロント・シリーズとは違って、必ずしもスタックごとに解決することを求められません。一つの攻撃目標のへクスを攻撃するユニットが全て移動して隣接してから攻撃してもいいのです。
 そして攻撃側の射撃の前に防御側の射撃があり、それで命中をくらって退却したスタックは当然続く攻撃射撃には参加できません。射撃結果は数字で、その数字の分だけステップロスするか後退するか選択するのですが、両方の組み合わせはありません。
 重要なのはステップロスを選択しても、その場に踏みとどまるためにはモラル・チェックをパスする必要があること。それに失敗すると、せっかくロスを受け入れたのに退却しないといけません。
 つまり攻撃側が戦車のハイ・スタックで何十火力あろうとも、1発当たっただけで退却させられては結局攻撃できないことになります。それで攻撃側はできるだけ複数のへクスから攻撃したいわけで、システム的に複数方向からの攻撃が有利になるようになっています。防御側はいくら戦力があっても、防御射撃ができるのは攻撃側の1スタックに限られるというのも複数ヘクスからの攻撃を一層有効にしています。ゲームによってはこれをサイの目修正などで表現しているものもありますが、そんなことをせずに合理的に処理できているわけです。

 *独ソの質的差異その1
  ここで出てきたモラル・チェックですが、ドイツ軍の場合サイコロ1個振りで5以下で成功ですが、ソ連軍の場合は4以下になります。つまり失敗する確率が倍違うわけで、ソ連軍の脆さが表れています。簡単ながら有効な処置といえましょう。ソ連軍の戦車スタックがたった1発の防御射撃の命中で退却していくこともあるわけで、いかにもという感じです。

 *独ソの質的差異その2
 射撃を行う場合、それが防御側でも攻撃側でも、ドイツ軍がするときは1コラム有利にシフトします。これは低火力のときに劇的な違いを見せます。火力1ではサイコロ1個振りで1しか命中はありませんが、1シフトして3-4火力の欄になると1と2で命中になります。確率が倍増えるわけで、防御側のドイツ歩兵が2 ステップ以上あれば、ソ連軍の攻撃側スタックは1/3の確率で命中を受ける可能性があり、その場合1/3の確率で退却します。つまり相手が弱小でも1/9の確率で攻撃側退却になるわけで、これは結構な確率ではないでしょうか。逆に攻撃
を受ける側になることが多いドイツ軍としては、損害を受けても各ユニットは最低2ステップを維持したいところです。1ステップになると実に頼りなくなります。

2 目標種別について
 射撃火力はそのユニットのステップ数に目標種別で定められた係数をかけて算出するのですが、その「係数」がなかなか極端で、普通の戦車は何が相手でも2倍ですが、重戦車は相手が歩兵なら2倍、戦車なら3倍です。そして歩兵は相手が歩兵ならそのまま1倍ですが、相手が戦車なら1/2になってしまいます。つまり歩兵を攻撃する場合、歩兵スタックと戦車スタックでは受ける防御射撃の火力が倍違うことになり、当然それに生き残る可能性もかなり違ってきます。
 スタックはどのような構成であろうとも、戦車が1ユニットでもあれば戦車目標になります。したがって攻防ともなるべく戦車とスタックしたいので、自然と諸兵科連合の組み合わせになります。もちろん、戦車だけのスタックの方が強力なのですが、双方ともそんなに戦車ユニットがあるわけではなく、歩兵の方がずっと多いのです。

 *独ソの質的差異その3
 歩兵+戦車のスタックを作るといっても、ドイツ軍は比較的容易ですが、ソ連軍はかなり困難です。それはスタック制限のルールのせいです。ドイツ軍の歩兵ユニットはすべて連隊規模で、これは1個なら1または2個の戦車ユニットとスタックできます。しかしソ連軍の歩兵のほとんどは師団で、これは他の何物ともスタックできません。戦車とスタックできる歩兵は機械化軍団に所属する自動車化歩兵旅団だけで、これはゲーム全体で8個しかありません(他に連隊規模の歩兵が1つだけあります)。これは歩兵師団に比べるとずっと数が少ないのです。したがってソ連軍は複数へクスから攻撃してもそのいくつかは歩兵師団にならざるを得ず、これは敵歩兵の防御射撃に対して脆いのです。このことは大きな質的劣勢といえるでしょう。

 このようにこのゲームは、システム的に自然と部隊の種類による質的な差異や、独ソの質的な差異を表すことに成功しているのです。
 盤上、特に序盤はソ連軍の数的優位は圧倒的ですが、ソ連軍の歩兵師団は消耗していくとスタックできないために使いづらい存在になってきて、要地の守備隊か二線を引く役割しか与えられず、文字通りの「2線級部隊」になってしまいます。このゲームには増援はありますが、補充ルールはないので、ステップロスしたユニットは回復しません。1ステップだけになってしまったユニットは事実上攻撃には使えないと言っていいでしょう。ユニットが消滅してもVPに関わる損害ポイントはステップ数なので、ソ連軍は歩兵のロスは集中させるなどのテクニックが必要でしょう。逆に戦線を維持するのに部隊の数が必要なドイツ軍は、ユニット数を減らさないようロスを分散させることになるでしょう。ユニットは1ステップでも強ZOCを持っているので、除去されるのと生き残るのでは大違いです。

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