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ポート・モレスビーへの道 [古いゲーム]

「歴史群像」最新号の記事の中に、太平戦争中の日本陸軍によるポート・モレスビー攻撃の話がある。その中で興味深いのは、実際に陸路でこの作戦を行ったらどのくらいの後方支援が必要かを試算した話のコラムで、それによると最終的には陸路担送によって補給物資を運ばないといけないので、数万人規模の人員が補給のために必要となると出て、とても陸路からの攻略は無理と分かったということである。現に行われた作戦ではスタンレー山脈を越えて進撃したものの、結局補給が続かず、連合軍側の反撃を受けて日本軍側はほとんど全滅した。それはインパール作戦より2年の前のことで、規模は違うものの同様に悲惨な結末だった。
私がこの記事に興味を持ったのは、太平洋戦争を扱った戦略級のゲームで、このポート・モレスビーに対する陸路攻撃の評価が、ゲームによってかなり違うからで、特にもっとも新しいGMTの「エンパイア・オブ・ザ・サン」ではこの攻撃が比較的容易だからである。地図を見るとなんとニューギニア北岸のブナのヘクスからポート・モスレピーのヘクスまで道路まで通じている。
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これが事実なら、先ほどの試算のような結論になるはずがない。トラックが使えるなら人の背で荷物を運ぶ必要などないからである。これはあまりにひどいので、他のゲームでどうなっているか調べてみたら、

同じGMTの「アジア・エンガルフド」は、エリア式だが、ニューギニアの北側のラエ・エリアと南のポート・モレスビーのあるエリアの間は通行不能になっている。これでは陸路からの攻撃できない。
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VG「パシフィック・ウォー」は、ヘクスゲームで、「エンパイア・オブ・ザ・サン」と同様ニューギニア北岸のヘクスからポート・モスレピーのヘクスまで道路まで通じている。ただ、モレスビー側の地形は山地になっていて、山地ヘクスの地形効果は左に3シフトなので、かなり堅い。しかも山地に対しては道路沿いでないと侵入できないので、攻撃はこの1ヘクスからのみとなる。
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なお、このゲームは日本側から見て地名の文字が読めるようになっているので、他のゲームとは地図が逆さになる。

AH「ライジング・サン」は、かの「第三帝国」システムの太平洋戦争ゲームである。ニューギニア北岸のブナ・ヘクスからポート・モスレビーのヘクスの間には、特に攻撃を制限するような地形はない。モレスビーのヘクスがジャングルなのか山地ジャングルなのか微妙。後者なら+2DMなので防御力4倍になる。よって強力なユニットがここに配置されれば攻撃は困難になる。一応、セットアップで豪軍歩兵3-2を一つ置くことは可能。
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GJ#39「真珠湾強襲」
アルンヘム・システムの戦略級エリア式ゲーム。一部の港湾などはそれだけで1つのエリアになっている反面、陸上エリアでも進入禁止になっているところがある。そしてニューギニアは東西とも進入禁止。つまり陸上からモレスビーを攻撃することはできない。実に潔い処理である。
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旧GJ「大日本帝国の盛衰」
小さいながらもよくできた好ゲーム。一つのヘクスが大きいので、ほとんどエリア式に近い。
ルール上、特にポート・モレスビーへの陸上からの攻撃を困難にするようなものはない。同一ヘクス戦闘だが、陸上ユニットは1ヘクス移動できるので、ラエのヘクスから隣のモレスビーに行ける。この間が山脈ヘクスサイドだと移動できないので、そうしていてもよさそうだが、あえてしていないということは、陸上からの攻撃を可能にしていると考えられる。
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旧HJ「太平洋艦隊」
ゲームタイトルが示す通り、主役は米軍側で、日本が勝てることはないと言われたゲーム。私の持っているのはサンセット版。
ラエとポート・モレスビーの間は山岳ヘクスサイドだが、+2LSPの消費で移動できる。問題はその上に書いてある赤い破線で、これは攻勢限界線。この線を超える戦力は制限され、補給も厳しくなる。これによってモレスビーへの攻撃を制限しているわけで、ただの陸上攻撃とは別レベルになる。
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以上7つのゲームのうち、モレスビーへの陸上攻撃をルール上特に制限したり、困難にしたりしていないのは「エンパイア・オブ・ザ・サン」の他はAH「ライジング・サン」と旧GJ「大日本帝国の盛衰」の3つなので、特に少ないとは言えない。しかし昔の二つのゲームはプレー経験があり、それぞれポート・モレスビー攻撃は簡単ではなかった覚えがある。
私の感じでは、「エンパイア・オブ・ザ・サン」が最も普通の陸路からの攻撃で攻略可能と思う。連合軍側がかなり強力に防御しないと簡単におちるといった印象がある。新しいゲームでこれはどういうことだろうか。他の陸地と同様に、普通に陸軍ユニットが攻撃できるのは、史実から見ておかしいと思う。システム的にそのあたりに差別をつけることが難しいゲームならともかく、そうでない場合には何らかの措置をするのが、史実を重視する場合は必要だろうし、逆に何らかの意図があってそれを可能にしたい場合は、あえて差別をしないということかもしれない。
「エンパイア・オブ・ザ・サン」の場合はせっかくのカード・ドリブンなのだから、特定のカード・イベントでだけ攻撃を可能にするようなこともできたはず。そうしなかったのは、ゲームバランス上の問題で、その方が日本側に勝てる可能性が高くなり、日本人に売れると思ったのだろうか。
ただ、私の評価としては、そのためにかえってこのゲームは落ちる。架空戦記はいらないのである。スタンレー山脈をただの丘程度にしか評価しないゲームは、シミュレーションとは言えないだろう。

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