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「ウィンゲート空挺団」-誰もがナポレオンになるわけじゃない [本]

「ウィンゲート空挺団」をほぼ読み終わる。この本はウィンゲートの参謀長だったデリク・タラクという人が、彼の汚名をはらそうとしたものなので、最後はそのことに終始している。特に公刊戦史が彼を悪く言っているのは、階級を尊重しない彼のやり方を真似る若手将校が次から次へと出てきては困るというもの。確かに、保守的な英国ではありそうなことだが、本当にそういう意味だとしたら、それは取り越し苦労というものだろう。例えば、ウィンゲートを知らない人でもナポレオンは知っているが、若手将校の全部が彼のようになりたいと思うわけではない。26才で方面軍司令官になりたいなどと思う将校が今時いたら、ずいぶんな変わり者だ。
ウィンゲートの功績はそれほど極端なものでなくても、クーデリアンやロンメルのような希有なもので、それだけにものの分かった者なら、誰でも彼のようになりたいと思うわけではないだろう。ウィンゲートの戦史は「希有な例」と認識されるはずで、そのためにはむしろ史実を包み隠さず伝えるべきだろう。第2次チンディット作戦は5個旅団にも及び数百機の輸送機を使ったもので、これを無かったことにできるわけはない。それをあえて無視するような戦史を残しては、英軍内に怪しい空気が流れてしまうのではないだろうか。事実が広く知られた上でいろいろな評価が出てくるのはいいとして、その前に事実を封印してしまうとは愚かなこと。本当に英軍においてそんなことが行われたのだろうか。
また、インパール作戦の結末で分かるとおり、結局第31師団も15師団も撤退はしているが、その経路は本来ならウィンゲートの部隊に妨害されていたはずのところだ。もしそうなっていたらもっと悲惨なことになっていただろう。結局そうはならなかった理由はこの本でもはっきりしない。この本ではウィンゲートの後任がよく分かっていなかったからだとか、スティルウェルがチンディット部隊を指揮下に入れたかったから部隊が北上してしまったからだと言っているが、そもそも挺身部隊の作戦期間は3ヶ月と見込みまれていたし、雨期になれば空中補給ができなくなるのだから、やはり6月のあたりで撤退しなければならなくなるのは、誰が指揮官でも変わらなかっただろう。そこらへんをもウィンゲートがいなかったせいにしたがっているように読める本書は、少しひいきの引き倒しが過ぎるようである。
とは言え、空中補給による長距離挺身というものが可能であることを示しただけでも、彼は非凡だったし、43-44年のビルマという格好の戦場を与えられたのは幸運だったろう。なにしろインパール作戦がなければ、彼の提唱した作戦はあれほど「はまり」はしなかっただろうから。

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